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なぜボリビアはワインの新天地なのか?常識を覆す5つの理由ワインジャーナリストとして世界中の産地を巡ってきましたが、これほど心を揺さぶられたフロンティアは久しぶりです。有名なワイン産地と聞いて、あなたはどこを思い浮かべますか?フランスのボルドー、イタリアのトスカーナ、あるいはカリフォルニアのナパ・ヴァレーかもしれません。しかし、南米の中心に位置するボリビアが、今、ワイン愛好家たちの間で静かな注目

  • 執筆者の写真: Salshio
    Salshio
  • 10月10日
  • 読了時間: 6分

なぜボリビアはワインの新天地なのか?常識を覆す5つの理由

ワインジャーナリストとして世界中の産地を巡ってきましたが、これほど心を揺さぶられたフロンティアは久しぶりです。有名なワイン産地と聞いて、あなたはどこを思い浮かべますか?フランスのボルドー、イタリアのトスカーナ、あるいはカリフォルニアのナパ・ヴァレーかもしれません。しかし、南米の中心に位置するボリビアが、今、ワイン愛好家たちの間で静かな注目を集めている「新たなフロンティア」であることは、まだあまり知られていません。

ボリビアのワインは、私たちがワインについて知っている常識を覆すような、驚きと発見に満ちています。その秘密は、アンデスの高地がもたらす唯一無二のテロワールにあります。この記事では、ボリビアの「1750ワイナリー」でワインメーカーを務めるフランシスコ・ロイグ氏へのインタビューから明らかになった、ボリビアワインの最も驚くべき5つの事実をご紹介します。

1. 他の産地が終わる場所から、ワイン造りが始まる

ボリビアワインを定義づける最大の特徴は、その「極端な標高」にあります。一般的なワイン産地ではブドウ栽培が不可能とされる高さから、ボリビアのワイン造りはスタートするのです。

具体的には、標高1,600メートルからブドウ栽培が始まり、高いところでは実に3,000メートル近くにまで達します。この驚異的な事実は、ボリビアワインのユニークな個性を理解するための最初の鍵となります。この点について、ロイグ氏は次のように語っています。

ボリビアでは、他の産地が通常ブドウ栽培を終える標高1,500、1,600メートルから栽培が始まり、そこから標高3,000メートル近くまで続くのです。

これほど高い標高は、ワインに強烈な太陽光と冷涼な夜との大きな寒暖差をもたらします。その結果、凝縮した果実味と同時に、生き生きとした酸味とフレッシュさを備えた、他に類を見ないキャラクターのワインが生まれるのです。

2. 熱帯気候なのに「四季」が存在する理由

ボリビアは熱帯緯度に位置しています。通常、高品質なワイン用ブドウを育てるには、冬の休眠期を可能にする「四季」が必要です。では、熱帯のボリビアで、どのようにしてブドウ樹は休息できるのでしょうか?

ここにも、ボリビアのテロワールが持つ驚くべきパラドックスが存在します。その答えは、2つの自然条件の組み合わせにあります。

1. 標高: 高い標高が、熱帯の暑さを和らげ、ワインに必要な冷涼さとフレッシュさをもたらします。

2. 「スラーソ(Suraso)」と呼ばれる風: これは、冬の間に南から吹く冷たい季節風です。この風が、チャコ平原に面したアンデス山脈の南東斜面に吹き付けることで、気温が下がり、ブドウ樹が休眠するための「冬」が人為的ではなく自然に作り出されるのです。

この自然の摂理を巧みに利用することで、一見ワイン造りには不向きに思える熱帯地域での高品質なブドウ栽培が可能になっています。このユニークな気候こそが、ボリビアワインに常識外れのフレーバープロファイルをもたらす土台となっているのです。

3. ワイン造りの常識を覆す「北東向き」のブドウ畑

ワインを学んだことがある人なら、「北半球では日当たりを最大化するために南向きの斜面が良い」と教わったことがあるでしょう。フランスをはじめとする多くの銘醸地で、これはワイン造りの基本とされています。

しかし、ボリビアではこの常識が通用しません。彼らのブドウ畑は「北東向き」に作られているのです。これは、ボリビアが南半球に位置しているためです。南半球では、北東向きの斜面が最も長く太陽の光を浴びることができ、ブドウの成熟を促すための最適な方角となります。

この事実は、ワイン造りのルールが絶対的なものではなく、その土地の環境に合わせて最適化されるべきだということを教えてくれます。ヨーロッパの伝統をただ模倣するのではなく、自分たちの土地を深く理解し、適応させていく姿勢こそが、ボリビアワインの品質を支えているのです。

4. 「グリルしたピーマン」?高地が生む唯一無二のフレーバー

1750ワイナリーのワインが持つ味わいは、まさに高地でしか生まれないユニークなものです。特にカベルネ・ソーヴィニヨンとタナという品種には、その特徴が顕著に表れています。

カベルネ・ソーヴィニヨン: 骨格はフランスのボルドー左岸産のものと似ていますが、その香りには驚くべき個性があります。ブラックチェリーやサワーチェリー、ミント、オレンジのニュアンスに加え、ロイグ氏が「グリルしたピーマン」と表現する、独特の青いノートが感じられます。これは未熟なブドウに由来するものではなく、この土地ならではの熟したアロマなのです。この独特な香りは、まさにセクション1で触れた極端な高地の強い紫外線と冷涼な気候がもたらす、特有のアロマ成分の現れなのでしょう。

タナ: 標高の高さがもたらす強い紫外線により、糖度が上がりアルコール度数は14%を超えます。しかし同時に、冷涼な気候が非常に高い酸味を保ちます。ワインの世界では、これほど稀有な組み合わせは滅多にありません。通常、高い糖度を得るために必要な熱は酸を失わせてしまうからです。しかしボリビアでは、強い紫外線が熱を伴わずに糖度を高めるため、力強い熟度と鮮やかなフレッシュ感を両立させることができるのです。この驚くべきバランスが、ワインに素晴らしい熟成のポテンシャルを与えています。そのおかげで、力強くありながらも驚くほど親しみやすく、肉料理だけでなく、ベジタリアン料理とも見事に調和します。

5. 世界で唯一?ワインとコーヒーの産地が隣接する場所

ボリビアのサマイパタ地域は、ワイン愛好家にとってだけでなく、旅好きにとっても非常に魅力的な場所です。ワイナリーの近くには、「エル・プエブリト」という美しいホテルや、ユネスコ世界遺産に登録されたインカ以前の遺跡「エル・フエルテ」、国立公園、修道院、野鳥保護区など、見どころが豊富にあります。

そして最も驚くべきは、この地域が持つ地理的な特異性です。サマイパタは、世界のワイン生産地帯(ワインベルト)とコーヒー生産地帯(コーヒーベルト)が、ほぼ隣接する世界で唯一の場所かもしれないのです。ワイナリーからコーヒー農園までは、車でわずか30分。一日でワイナリーツアーとコーヒーツアーの両方を楽しむという、食と飲物の愛好家にとっては夢のような体験が可能です。

ボリビアは、ワインの世界において驚くべきコントラストと革新性に満ちた土地です。極端な標高、熱帯気候の中の四季、常識を覆す畑の方角、そしてそこでしか生まれない唯一無二の味わい。そのすべてが、ボリビアワインを特別な存在にしています。

フランシスコ氏の話を聞き、実際にワインを味わった今、ボリビアが単なる目新しい産地ではなく、世界のワイン地図を塗り替える可能性を秘めていると確信しています。次にあなたが手に取るべきワインは、このアンデスの高地から来た一本かもしれませんね?


 
 
 

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